2011年07月05日

メディアは、リスクを増幅する

毎日新聞の小島正美記者は、「メディアはリスクを増幅する構造を持っている」と、いろいろな場で語っています。つまり、物事の危険な部分だけを強調してしまう構造があると言っています。ちなみに小島記者は、生活家庭部において、ダイオキシン、化学物質、BSE(狂牛病)、遺伝子組み換え大豆など、食の安全や環境問題を担当されています。

専門家は、リスクを「物質の毒性」×「その毒性の摂取量」と分解して考えます。そして、「摂取量が基準値をこえる可能性」を踏まえて、全体的にリスクを考えます。
しかし、消費者は、専門家のようにリスクを分解して理解できません。内容が難しいからです。そこで、本来であれば、メディアがその難しさをかみくだいて、消費者も専門家のようにリスクを理解できるように、やさしく解説することが大事なのですが、メディアは、なかなかそういったことをやってくれません。

メディアは、「物質の毒性」そのものを重視して、リスクを報道してしまう傾向があり、ゆえに、消費者がリスクを大きく認識してしまう、つまり増幅効果があると言います。
事例として、例えば、フタル酸エステルという化学物質を挙げています。マウス実験で大量投与によって精子が減ることがわかりました。しかし、「量」の問題は記事にかかず、「精子が減った」「つまり、何らかの危険性がある」ということだけを報道してしまいます。そうなると、読者は危ないという情報だけインプットされます。フタル酸エステルは、おもちゃに使われていますから、「おもちゃをなめたら大変だ」という、母親の認識につながり、心配を引き起こす形になるし、実際そのような問い合わせをもらったと言います。

なめる程度の「量」では全く問題ありません。しかし、「摂取量」と「大量に摂取してしまう可能性」を触れずに、「毒性」の部分だけ報道するのがメディアで、結果的に読者に「毒性」だけが強く認識されてしまうと言います。

小島記者は、その理由を述べています。多くの記者が、「メディアの役割は、問題点を指摘すること」だと思っていからだと指摘します。毒性があるならば、その「量」などは横に置いて、「毒性」という問題点だけを指摘することが、自分たちの役割だと本気で思っているからだと言います。
(また、市民団体や学者の話を検証せずに、そのまま流してしまう問題点も挙げていますが、その部分は割愛します)

その処方箋として、記者に対して、正確な情報、多面的な情報をしっかりレクチャーすることだとしています。記者も、理解をすれば、ひとつの側面だけを強調した記事は書かないはずだと言います。そのコミュニケーションが、学者、学会、政府、企業において弱いので、「毒性」だけを強調した、偏った認識が消費者に広まってしまうと言います。
小島記者は、過去に自分も「毒性」だけを報道してきてしまったという反省をされています。メディアの中からの発言で、大変参考になります。
posted by 秋山ひろやす at 12:09| エッセイ | 更新情報をチェックする
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